日本で最も古い書物とされる古事記や日本書記の中に、神を祀(まつ)るための道具として三種の神器が登場します。その一つが八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)です。
三種の神器のイメージ。上から八咫鏡(やたのかがみ)、草薙剣(くさなぎのつるぎ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)参照:ja.wikipedia
以前は、この勾玉に用いられた翡翠は中国から伝わったものではないかと言われていましたが、昭和に入ってからの研究によって、日本固有の翡翠である糸魚川翡翠であることがわかりました。なぜ糸魚川翡翠の勾玉が神を祀るための道具として用いられたのでしょうか。
古来より、日本人は大自然を敬い、自然の神秘的な現象の中に神の存在を見出していました。古代の人々にとって、翡翠の神秘的な緑色は、草木の持つ緑色と重なり、まさに自然が生み出す生命力や神秘的な力の象徴と映ったのではないでしょうか。また、勾玉の独特な形状は、月をかたどったものとも、胎児をかたどったものとも言われています。いずれも人の力では生み出すことが出来ない神秘的な力によって生み出されたものです。
神が創り出した神秘的な翡翠に、神の力の象徴である月や胎児をかたどることで、まさに神の力が宿るものとして祀られたのだと思います。